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Sidi Larbi Cherkaoui

下の部屋の水漏れの件でお世話になっているマダムから思いがけないお誘いをいただいて、ダンサーSidi Larbi Cherkaouiの新作'Myth'をTheatre de la villeで観てきました。




舞台は図書館。棚にはぎっしりと本が詰まり、左上部には中世の楽器を操るミュージシャンが7名。ダンサーは14名。図書館員、どこにでもいそうな太ったマダム、やたらと足の長い黒人のゲイらしき男性。赤毛のヒステリックな女性。軍人か?制服らしきものを着た小柄でぶっくりしとした男性。そして獣のような声を発しながらそれぞれの足元を這い絡みつく黒い影たち。
舞台美術は図書館の中だとしても正面にすえられた大きな扉が神聖な印象を与え、中世の音楽がまた時空間のイメージを広げる。
人の運命を操るのは誰?最後の扉を開けるのは誰?
時々セリフも織り込まれ、フランス語、アメリカンアクサンの英語、ドイツ語、韓国語(?)、そして日本語。それぞれの人間の心の底深い闇が暴かれ傷が赤裸々に剥がされ、つい目を伏せがちな暗い国家的背景が吐き出されていく。
ゲイのタップダンサーがまた完全なるアメリカンアクサンでくだらない毒舌に自分で酔いしれながらセリフを転がす姿がキャラクターをより生き生きとさせ、外国人嫌いのフランスマダムもやっぱり日常どこでも居そうだし。でもまぁそのセリフがどこまで必要だったかは、個人的には正直疑問は残るけれど。。。(彼らは役者ではないだろうから技術的な点で言葉で観客を満足させるのはむずかしいのかもしれないとも思った。)
でもまぁ何よりダンス。それぞれ14名のダンサーは素晴らしかった!(中には日本人の男性ダンサーもいましたよ!)
立体的に舞台を使い、構成された動きに目は完全に釘付けになり見逃したくない思いからあちらこちらへと視線は忙しい。
黒い影達は空気のように滑らかに舞い身体を完全に自由に操り、真っ黒な長い髪を振り乱して棚から身を乗り出す姿には不気味さが漂う。
3m以上(もしかすると5m?)の長~い棒を使ってのシーンも見事で、その前のセリフが続いたシーンのちょっと中だるみした空気を一気に吹き飛ばし緊張感を保てたし。

「Sidi Larbiの作品は常に同じ」と書かれたものもあったが、私は初めてだったからとても新鮮な気持ちで十分楽しんだし、いろいろな意味で舞台創りに対する意欲を感じる作品だった。
そしてパリジャン達を満足させたことはカーテンコールの拍手の大きさ、いつまでも続くブラヴォーの歓声、そしてなにより出演者達の眩しい笑顔から十分伝わってきた。

出会いのきっかけは決して歓迎できるものではないけれど、マダムとの楽しいひと時には本当に心から感謝!!merci madame Agnes!!!(。。。しかし水漏れの問題はまだまだつづくけど。。。苦)

youtubeで見つけた画像を2つほど。
一つは今回の作品の一部。(画像も音も悪いから印象があまりよくないかもしれないけれど実際の舞台はもちろんこれより遥かによかったですよ):Sidi Larbi Cherkaoui1

もう一つは別の作品,'FOI(2004)'
ここで裸で踊っているAlexandra Gilbertが今回も真っ黒毛むくじゃらで踊り、最後はアイボリーの衣装で踊るのだが、彼女、ホント素晴らしかった!!!
Sidi Larbi Cherkaoui2
by nishimaggiefr | 2007-10-01 22:32

Labo1113 仙台↔フランス。 まさか再びこの国に暮らすことになるとは。。。人生何が起こるかわからない!花やアートやいろいろ好きなこと、日ごろのよもやま話あれやこれ。


by nishimaggiefr