(↓今日の回想録は長いです。笑 よろしければどうぞお時間のある時にでもお読みくださいね。)
今回の貝山さんのコンサートのデコレーション。
ご依頼頂いた後、フライヤーも驚くほど早々に出来ていたのですが、実は実際にお会いして打ち合わせをしたのは何と本番一週間前!(笑)
そしてその時に伺った貝山さんからのオーダーは「テーマは夜明けの歌なので、来てくださった方に希望を感じていただけるようなイメージで」と。後は「恵ちゃんに任せるから」と。嬉しいような不安なような…。
その他、テクニカルな面での具体的な制約としては
・能舞台に水滴がつくと、木に沁み込み、シミになってしまうので、水は使用不可。
・舞台正面に描かれている松の絵はそのまま使う。(舞台使用時黒い幕で覆うことも可能)
・ダンサーの方が躍る場所を確保する。
・・・・等々。
それから2,3日は睡眠中も脳はぐるぐるとイメージを求めて覚醒したまま…
まさに寝ても覚めてもあの能舞台に何をどのように飾ろうか?と、お花を飾った舞台の絵(構図)を求め、濃霧の中、光を求めてさまよっていました。
その中で私が決めたデコレーションのイメージは
・能舞台が持つ場の力に圧倒されず、何か新しい風を吹き込むようなデコ。
・見た人の感性が嬉々と揺れるもの。
・決して和風にはしない。
・シャンソンだし、どこかパリの香りも届けたい。。。。
・いわゆるフラワーアレンジメント(花活け)ではなく、空間を作りたい。
・そして何より、「愛がさんさんと降り注ぐような舞台装花」を作る。
と。
その後、舞台監督の小林さんとアポを取り、実際能BOXでの設備上できるデコレーションの位置などを確認。しかしやってみたいと思った装飾が出来ない事を知る。(ショック!!!)
その際に撤収時間があまりないので、片付ける際の時間的考慮も必要事項として加えられる。
それが14日、本番4日前。
15日には幸運にも能BOXのこけら落し公演
「石橋+Shakkyou -津村禮次郎×森山開次」を観劇することができ、演目を楽しみつつも、観客として能舞台と向き合い、どこに何があったら効果的か?どのように設置できるか?などと思いをめぐらす。
そして…そこから搬入まで2日間。
舞台屋根部分の内側にどうしても「愛さんさん」と赤バラを吊るしたい想いは変わらず、急遽2mの枝を6本使用することに決める。ダメ元で改めて小林さんに吊り下げできるようお願いしてみたところ、3度目の正直?OKをいただく。
枝はケヤキ(仙台のシンボル的存在の木)。少し黒っぽい茶色だが、能舞台の白っぽい木肌の色とのバランスを考え、また赤バラとのバランス、そしてオブジェ的存在感にしたいことから、全ての枝を金色に塗る。
それから、能舞台の外側を飛ぶ、愛を届ける(バラをくわえた)鳥の制作。
ワイヤーでのベース作り。ボディには2㎏の藁を洗って使用。羽根はパンパス(銀葦)で表現。
吊り下げ用のバラは巨大輪の赤バラ。花の直径は開くと10㎝以上。長さは80㎝はある存在感のある赤バラ一万本!…としたかったけれど予算の都合上50本。
しかも後は舞台に設置された照明の位置との現場での調整。。。明りを遮って出演者に影がかからないような位置に枝をセットし。吊り下げるバラの位置も調整。
全て大きな脚立の上での作業。舞台監督の小林さん、照明の山口さんのご協力を頂きながら、取りつけては降りて位置確認、そしてまた脚立に上って…の繰り返し。
(ちなみに小林さんは私よりも小柄な女性なのですが、その機敏な対応、技術者としての仕事振り、本当に素晴らしかったです!大変お世話になりました。ありがとうございます!!)
それから舞台上には2か所に分けて柳で制作した大・中・小6個のボールを配置し、赤のアマリリス、茎が柔らかいグロリオサを、舞う蝶のように絡める事に。
生花を使うため、予めセットしてみることなんてできないから、全ては当日一発勝負のデコレーション。幾らイメージしてみても、実際花を置いてみないと分からないところがあるので、自分の感性と経験を信じつつもぎりぎりまで本当に素敵になる?と自問自答。心落ち着かぬまま当日を迎え…。
2日間に及ぶ現場の作業を終え、ほっと一息ついたのは開演1時間前でした。

(写真あまりよく見えませんが…イメージは伝わります?)
こうして、2011年秋の私にとって最大級の緊張感あるデコレーションは完成。
一つの挑戦でもあり、もちろん喜びでもあり、そしていい勉強の場にもなりました。
・・・・・・・・・
15年ほど前、フラワーデザインを勉強し始めた頃に梅若能楽堂でダニエル・オスト(ベルギーのフラワーアーティスト)のデモンストレーション&梅若さんのお能を観劇して以来、漠然と夢見ていた能舞台への装花。もちろんそれは夢のまた夢、はるかな憧れの仕事でした。
今年の夏、能BOXが出来る情報を得た時にふとその夢を思い出し、「いつかできたらいいな…」と思ってはいたものの、まさかこうして早々に実現するなんて!
うーん。つくづく感慨深いです。
しかも、今振り返ってみても、今回のデコレーションについて、貝山さんはよく任せてくださったなぁ、とつくづく思います。
イメージはあったとしても当日デコが設置し終わるまで、一体どうなるか、私自身もわからないのですから!(苦笑)
全てを信頼して任せてくださったことに本当に感謝の一言です。
そして、終演後「想像していたよりずっと素晴らしかった!恵ちゃんに頼んでよかった。ありがとう!」と言っていただけて、本当に嬉しかったです。
能BOXの舞台にリノリウムを敷いて、ハイヒールを履いて立ち、コンサートをしたのも初めての試み、能などの伝統的な舞い以外のダンスを踊ったのも初めて。そしてもちろんお花も。
能BOXの様な、新しい試みに開かれた舞台が仙台に出来たことを私は誇りに思います。
これからもいろいろな表現者たちによって活用されて、仙台の芸術や文化がワクワクと広がる場所の一つとなることでしょう。
ますます楽しみですね。